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父が亡くなった日、僕はまだ子どもだった

2025/04/25

──自分を後回しにしてきたすべての人へ

17歳のとき、父が亡くなりました。


まだ47歳という若さでした。


葬儀には、900人以上の方が参列してくださいました。


その人数に、ただただ驚いたのを覚えています。



「この人は、本当に多くの人から慕われていたんだ」



目の前に広がる人の波を見ながら、そんなことを思いました。


でも──


そんな父のことを、僕は正直、大嫌いでした。


理由はただひとつ。



父は、いつも“人にばかり”優しくして、
自分自身や家族に対しては、いつも後回しだったから。


外では「素晴らしい人」と言われていた父。


けれど、家ではどこか遠い存在で、
反抗期だった僕は、父を無視し、ひどい言葉をぶつけることもありました。


今思えば、まったく“いい子”ではなかったと思います。


でも不思議なことに、
あの頃の父と、自分の姿がどこか重なることがあります。


家の中では不機嫌で、外では“いい人”。


周りに気を遣いすぎて、自分の気持ちは後回し。



「父みたいにはなりたくない」と思っていたはずなのに、
僕もまた、同じような生き方をしていたのです。


大人になるとは、
もしかすると「自分の中にある父親と和解すること」なのかもしれません。


父は、たしかに誰からも好かれる人でした。


そして、きっと、家族のことも大切に思っていたのでしょう。


ただ、不器用で、自分の気持ちを上手に出せなかっただけ。



それに気づけたのは、大人になってからでした。


今、カウンセラーとして多くの方と向き合う中で、
「自分を後回しにしてきた人」の言葉を、何度も聞いてきました。


「家族のために頑張ってきた」


「誰かを守るために我慢してきた」


「本当は泣きたかったけど、泣けなかった」


そのたびに、ふと思い出すのです。


あの葬儀の日の、あの光景を。


無理して、我慢して、頑張りすぎたその先で、
自分自身が壊れてしまうこともある。


だからこそ、声を大にして伝えたいのです。


自分を大切にしてください。


無理をしすぎないでください。


あなた自身が、あなたの人生の中で一番大切な存在なのです。


誰かを大切にすることと、
自分を大切にすることは、矛盾しません。


むしろ、自分を大切にできる人こそが、
本当に誰かを大切にできるのだと思います。


父の死から、もうすぐ30年。


僕は今年、父が亡くなったときと同じ47歳になります。


ようやく今、父に心から言えます。


「あなたの生き方も、ちゃんと見てたよ」って。