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4年間、何も食べられなかった僕を支えた母の“夜の習慣”

2026/03/09

僕はクローン病の闘病中、

4年間、食事をしていません。

 

代わりに、

細いチューブを鼻から通して、

栄養を体に入れていました。

 

毎晩、9時間。

 

眠っている間、

栄養剤をゆっくり体に流し続ける治療でした。

 

正直に言うと、

本当に嫌でした。

 

鼻からチューブを入れる。

 

経験した人なら分かると思いますが、

決して楽なものではありません。

 

何度も

「もうやめたい」と思いました。

 

そんなある夜のことです。

 

僕は、

ある光景を見てしまいました。

 

母が、

自分の鼻にチューブを入れようとしていたのです。

 

もちろん、

うまく入るはずもありません。

 

でも、その姿を見たとき

僕は思いました。

 

ああ、

しんどいのは

自分だけじゃないんだ。

 

それからです。

チューブを入れるたびに

「嫌だ」

と思う代わりに、

僕が頑張らなきゃ。

 

そう思うようになりました。

 

それから15年ほど経ったある日、

僕は母に聞いたことがあります。

 

「絶食の時、何が一番つらかった?」

 

鼻のチューブかな、

そう答えると思っていました。

 

でも母は、

少し考えてこう言いました。

 

「夜かな」

 

理由を聞くと、

こう言いました。

 

「点滴が止まってないか、
 夜中に見に行ってたんよ」

 

2時間おきに。

 

僕のベッドまで来て、

栄養がちゃんと流れているか確認していた。

 

それを毎晩。

 

僕は、

まったく知りませんでした。

 

そんなことを

してくれていたなんて。

 

もし途中で

栄養が止まってしまったら、

また鼻からチューブを入れて、

9時間やり直しになる。

 

それを

母が阻止してくれていたのです。

 

それを聞いたとき、

涙が止まりませんでした。

 

僕は4年間、

食べていません。

 

でも、

僕はひとりで

生きていたわけではありませんでした。

 

僕が眠っている間、

母が

夜を起きてくれていた。

 

闘病というのは、

患者だけの戦いではない。

 

家族もまた、

静かに戦っているのだと

そのとき初めて知りました。

 

だから僕は今、

こう思っています。

 

人は、

ひとりでは生きられない。

 

でも、

誰かの存在があると、

人は想像以上に強くなれる。

 

もし今、

苦しい時間の中にいる人がいたら。

 

覚えておいてほしいのです。

 

あなたの知らないところで、

あなたを支えている人が

きっといる。

 

そして、

その人はきっと、

あなたが眠っている夜に、

あなたのことを思っている。