昔、僕は書道、茶道、華道を習っていました。
小さな頃から、父や母に教わったり、
その後も、きちんと教室に通ったりして。
イギリスで日本語教師をしていた頃には、
日本文化を伝えるために、
生徒たちにそれらを教えたこともありました。
どれも、本当に素晴らしい世界でした。
でも、どれも数年しか続かなかった。
別に、嫌いでやめたわけじゃない。
むしろ、その奥深さに、心から敬意を抱いていました。
ただ、「道」がつく学びは、深くなればなるほど、
型が厳密に決まり、はみ出すことが許されない世界になる。
それに、僕は、どこか息苦しさを感じてしまった。
もっと自由でありたい。
もっと、自分らしく在りたい。
そう思う気持ちが、だんだん強くなって、
その場を離れる選択をしてきたんだと思います。
昔は、そんな自分を責めていました。
「続かないなんてダメだ」とか、
「ちゃんとできない自分は弱い」とか。
でも、今は少しだけ、思えるようになりました。
型通りも、素晴らしい。
自由でいることも、素晴らしい。
どちらが正しいとか間違っているとかじゃない。
何より、
あの時、ちゃんと伝統にふれたこと。
あの時間があったからこそ、
今の僕の中に、“静かな芯”みたいなものが、
育っている気がします。
学べたことに、心から感謝しています。
たとえ、道半ばであったとしても。