僕は、幼い頃から「助けて」と言えなかった。
本当は助けてもらいたいのに、素直になれず、強がって、ちっぽけなプライドと見栄が邪魔をして、いつも「助けて」とは言えなかった。
「助けて」なんて言うと、負けのような気がして、相手に「借り」を作るような感じもしたから、余計に言えなかった。
だから、絶対に「助けて」とは言わなかった。
これは、クローン病になった時も同じで、本当は助けてもらいたいのに、「助けて」とは言えなかった。
むしろ、その言葉だけは言いたくなかった。
その理由は、「助けて」なんて言ったところで難病が治るわけでもないし、そもそも
「お前に何ができるねん」
って心の中で思っていたから。
そんな僕は、本当に反抗的で、嫌な奴だったと思うし、そんな意固地な自分こそが「弱い」って、いま気づく。
昔から、祖父母に
「周りに迷惑をかけないように!」
と言われてきたから、「助けて」なんて言うと、絶対に他人に迷惑がかかると思っていたし、自分一人でなんとかしなきゃいけないと思っていた。
だから、独りで必死に頑張ってきたけど、何度も手術をしている時に、看護師さんから
「もう、大丈夫なフリをしなくて良いのよ」
「せめて、病院では泣いてください」
「あなたは、助けてもらうためにここにいるのよ」
そう言われて、僕は、涙を止められなかった。
その時、素直に「助けて」と言って、ただ自然に泣くことが、こんなにも癒やし効果があるとは、思ってもみなかった。
これには、衝撃を受けた。
ちょうどその頃、インドで、
「人は迷惑をかけてしか生きていけないのだから、人のことも許してあげなさい」
と教えていることを知って、「これだ!」って思った。
人は誰しも、他人に迷惑をかけずに生きていくなんて、あり得ない!
だから、迷惑をかけて、許されて生きることが普通なんだ!
お互いに許し合って、感謝して生きればいいんだ!
そう思った瞬間、これまで溜まっていたものが解放されて、心がスーッと軽くなっていくのを感じた。
日本では、まだまだ、
「人に迷惑をかけるのは悪い」
という価値観が残っているが、そもそも、人は決して一人では生きていけないし、そこに存在するだけで、何かしら迷惑をかけている。
それでも、みんな許されて生きているのだから、感謝と共に、お互いを思いやる行動で生きていけばいい!
「助けて」と言うのは、自分に対する勇気!
そして、相手に対する信頼だ!
神社昌弘(かんじゃまさひろ:本名)
https://kanja.info/contents_507.html
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「クローン病が教えてくれたこと」